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「川は何でも教えてくれる。」
ヘッセの小説「シッダールタ」のそんな一言から、
私の水を巡る思索は始まった。
何を描いても空ごと、
手を動かせば像はあらわれるが、
実感がもてなかった私は、
「シッダールタ」の
渡し守の老人の発したその言葉に
縋るように、川、池、湖、水路、など
川に限らず様々な水場を巡り、
水面に現れては消えていく
絶えまない像を見つめ、
そこに感じるものを探った。
表面に映ずる像は
絶えず移り変わり不確かなモノだが、
そこに確かに存在する。
水面は様々なものを映じ、
静かに心に波及し浸透する。
みずは表面的なイメージの源泉であるだけでなく、
人の奥底に潜む何かをも呼び起こす
触媒のようなものではないかと、
次第に感じ始めた。
心に浸透した像を、
身体の動きと岩絵具の痕跡的な色彩で、
書の筆蝕のごとく
手探りの実感を重ねて表せていけたら、
さらに深く踏み込めるかもしれない、、
今暫く描き続けて行こう、
―水を巡る思索― 日々の言葉より、
2006年6月 山口 健児